不安症研究
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総説
パニック症の神経解剖学的モデルについて
塩入 俊樹
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2019 年 11 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

本稿では,不安症群の代表的疾患の1つであるパニック症(PD)の生物学的仮説について,我々が以前より提唱している“Stress-induced fear circuitry disorders(SIFCD)”という疾患概念を中心に述べた。SIFCDとは,「ストレスによって,恐怖反応を司る神経回路に障害が生じたことでさまざまな症状を呈する疾患群」であり,その病態・成因モデルを端的に表すと,扁桃体(Bottom-up)の病的な活性化と前部帯状回等の前頭前皮質(PFC)(Top-down)の機能低下と言える。つまり,PDでは,扁桃体が過剰に反応し,PFCはそれにブレーキがかけられない,といった状態を呈している可能性がある。つまり,恐怖を司る神経回路(fear circuit: FC)の扁桃体を中心とした「Bottom-up」システムが強化され,PFCが司る「Top-down」システムが障害され,そのためにFCが正常に働かず,機能障害・不均衡を呈しているのがPDと言えよう。

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© 2019 日本不安症学会
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