2019 年 11 巻 1 号 p. 24-34
双極性障害での不安症の併存率は高いが,地域,対象の差より研究間の差の方が大きく(異質性が高い),治療研究は皆無に近く治療指針は定まっていない。それは双極性障害,不安症という2者関係では解決できないからと考えられる。そこで主診断が境界性パーソナリティ障害,自閉スペクトラム症である場合について論じた。境界性パーソナリティ障害と双極性障害は症候学的類似点があるが,境界性パーソナリティ障害が主診断の場合,それへの特異的な精神療法が必須である。自閉スペクトラム症では,早期介入されないまま成人に達し,双極性障害・不安症といった2次障害を生じて初めて受診することが課題となっている。そこで試論としての精神医学的介入アプローチを紹介した。この臨床課題の解決には,旧来の精神病圏,神経症圏のみならず,パーソナリティ障害,神経発達症をも含んだより広い視点と,より専門的な治療が必要である。