不安症研究
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特集:社交不安症
社交不安症の疫学―その概念の変遷と歴史―
音羽 健司森田 正哉
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2015 年 7 巻 1 号 p. 18-28

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抄録
社交不安症(SAD)は社交場面や対人面において恐れや不安を抱き,それを回避することで日常生活に支障を生じる疾患である。DSM-III以降,欧米では多くの疫学研究が行われるようになり,有病率の高さが注目された。DSM-IVでは社会恐怖の診断名に「社会不安障害」が併記され,恐怖症から不安障害へと名称・概念の変遷に至った。また,他の精神疾患の併存率の高さも指摘されており,特にうつ病や自殺のリスクに注意が必要である。DSM-5で初めて,SADはこれまでの自己主体性の不安だけでなく他者主体性の症状が盛り込まれ,わが国固有の対人恐怖症とほぼ同一の疾患概念として捉えられるようになった。本邦ではいまだ「見逃されている」精神疾患であり,診断と治療が依然十分には行き届いているとはいえない。わが国特有の文化的背景も考慮に入れつつ,患者に最適な治療が届くようにSADを見落とさない努力を医療者側が行う必要がある。
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© 2015, Japanese Society of Anxiety Disorder
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