2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 06-10
財務諸表などの財務データは、利害関係者や投資家が経済成長全体を最大化するために資本を最適化することを支援する可能性のある貴重で重要な情報を含んでいる。財務諸表には多くの変数が存在するため、それらの間の因果関係、すなわち方向性のある影響力を構造的に決定し、関連する会計メカニズムを理解することが極めて重要である。しかし、標準的な相関関数を用いた財務情報の変数間関係の分析では、方向性を明らかにするのに十分とは言えない。ここでは、Volatility Constrained Correlation(VC相関)法を用いて、任意の2つの変数間の方向性の関係を予測する。1990年から2018年までの28年間、東京証券取引所上場企業2321社の重要な財務情報5変数(売上高、純利益、営業利益、自己資本、時価総額)に対してVC相関法を適用する。本研究では、どの会計変数が影響力を持ち、どの会計変数が影響を受けやすいかを明らかにした。その結果、営業利益が最も影響力のある変数である一方、時価総額と収益が最も影響されやすい変数であることが分かった。意外なことに、この結果は、広く使われている投資戦略指標である株価収益率や株価純資産倍率が示唆する既存の直感的な理解とは異なる。この分析は、企業経営者、投資家などのステークホルダーが、財務管理パフォーマンスを向上させ、今後の企業の財務戦略などを最適化するのに役立つと思われる。