人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
2023 巻, FIN-030 号
第30回金融情報学研究会
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • Sato Yuki, Kanazawa Kiyoshi
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 01-05
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    金融市場における統計則の一つに価格インパクトの非線形性 (nonlinear price impact) と呼ばれる統計則がある。価格インパクトの非線形性とは、あるトレーダーが執行した注文に起因する価格変動のパスが凸型の非線形関数に従うという現象である。現在、この統計則に関して、市場・取引者・戦略依存せず、ある相似な非線形関数に従うという意味で普遍的 (universal) であるという学説と戦略や市場に依存して関数形が決まると主張する相異なる2種類の学説が有力視されている。このような相異なる2つの学説間で決着がいまだに着いていない理由は、価格インパクトに関する実証分析が、ある特定の取引主体に注目した限定しか行われておらず、包括的な分析(全数調査)が行われていないからだ。そこで我々は、東京証券取引所における価格インパクトに関して全数調査を行い、市場・取引者・戦略依存性について調査した。本講演では、その全数調査の結果とその結果から示唆される金融市場のモデルが持つと望ましいとされる統計則について議論する。

  • Ochiai Tomoshiro, Nacher Jose
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 06-10
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    財務諸表などの財務データは、利害関係者や投資家が経済成長全体を最大化するために資本を最適化することを支援する可能性のある貴重で重要な情報を含んでいる。財務諸表には多くの変数が存在するため、それらの間の因果関係、すなわち方向性のある影響力を構造的に決定し、関連する会計メカニズムを理解することが極めて重要である。しかし、標準的な相関関数を用いた財務情報の変数間関係の分析では、方向性を明らかにするのに十分とは言えない。ここでは、Volatility Constrained Correlation(VC相関)法を用いて、任意の2つの変数間の方向性の関係を予測する。1990年から2018年までの28年間、東京証券取引所上場企業2321社の重要な財務情報5変数(売上高、純利益、営業利益、自己資本、時価総額)に対してVC相関法を適用する。本研究では、どの会計変数が影響力を持ち、どの会計変数が影響を受けやすいかを明らかにした。その結果、営業利益が最も影響力のある変数である一方、時価総額と収益が最も影響されやすい変数であることが分かった。意外なことに、この結果は、広く使われている投資戦略指標である株価収益率や株価純資産倍率が示唆する既存の直感的な理解とは異なる。この分析は、企業経営者、投資家などのステークホルダーが、財務管理パフォーマンスを向上させ、今後の企業の財務戦略などを最適化するのに役立つと思われる。

  • 小池 和弘, 楊 迎莎, 田中 謙司, 佐川 大志
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 11-16
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    EC物流ビジネスにおいて需要予測は在庫の適正化によって機会損失を回避し在庫コストを削減するために重要な技術である。需要は様々な要因で変動するため高い予測精度を維持し続けることは簡単ではない。変動要因として例えばCOVID-19によるパンデミック、地震や台風などの自然災害、あるいはリーマン・ショックのような金融ショックなどの外部的な要因が考えられる。これらの変動要因が需要に与える影響を分析することで、将来大きな変動要因が発生した場合の想定をすることが本研究の目的である。アスクル株式会社の受注データを使い、過去の大きなショックが受注に与えた影響をグレンジャー因果分析とインパルス応答分析によって分析した。この分析結果を使って変動生成モデルを構築しシミュレーションする方法を提案する。

  • 水田 孝信
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 17-23
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    主に商品先物を取引するファンドであるCTA(Commodity Trading Advisor) は,かつては多くのファンドが高いリターンを得ていたが,2010年ごろからリターンを得るのが難しくなっている.その原因はいくつか指摘されているが,CTAを餌食にして利益を得る短期的な逆張り戦略が増えたという指摘がある.しかし,これらの指摘は根拠が薄い.そこで本研究では,CTAと短期逆張りを行う投資家を実装した人工市場モデルを構築し,短期逆張り戦略の出現がCTAのリターン減少につながったのかどうかを分析した.その結果,CTA・短期順張りともに,お互いがいたほうが戦略を実行するチャンスが多くなり利益を獲得していることが分かった.このため,短期的な逆張り戦略がCTAを餌食にして利益を得ているというのは誤りである可能性を指摘できただけでなく,むしろ共存共栄である可能性を示した.

  • 程 竜, 和泉 潔, 平野 正徳
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 24-31
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年、電力自由化と脱炭素化の取り組みが重要視されており、大口需要家の電力調達も様々な調達手段を組み合わせた複雑なものとなってきている。本研究では、大口需要家がカーボンニュートラルを実現するための電力調達戦略の分析を行った。電力市場を模擬した人工市場モデルを構築し、更にPV・FC・蓄電池・DRを含む調達手段を利用可能とした大口需要家である工場エージェントを導入した。本研究はまず、全ての調達手段を活用した新しい電力調達方針を作成した。その後カーボンニュートラルを実現するための総コストの観点から、各調達手段の効果を分析したほか、さらにDRシナリオの改善と効果の検証を行った。結果として、PVは顕著なコスト削減効果を持っており、FCの効果は発電単価の値下げに伴い大幅に増大していた。蓄電池とDRの効果はPVほどではないが、一定の効果が確認できるため、有効な調達手段と考えられる。これらの分析結果に基づくと、DRシナリオにPVの影響を考慮すべきであると考えられるため、最後に、PVの稼働を考慮に入れるDRシナリオを作成した。それを用いた実験の結果、この新しいシナリオが脱炭素にかかる総コストの低減につながることが確認できた。

  • 籔内 陽斗, 松井 藤五郎, 武藤 敦子, 島 孔介, 森山 甲一, 犬塚 信博
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 32-39
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ファンド(投資信託)の中には目論見書に記された運用方針と実際の運用方針が異なる場合がある。先行研究では実際の運用方針に基づくファンドのグループ分けを目的に、月次リターンの時系列に対してk-meansとUMAPを組み合わせた手法を用いてファンドをクラスタリングする方法が提案された。しかし、k-meansによるクラスタリングではラベル情報を一切使用しないという問題がある。本論文では、インデックスファンドのラベルは正しいと仮定し、ラベル情報を使用可能な手法であるOne-class SVMを導入する。ところが、通常のOne-class SVMでは、ラベルが付与されたインデックスファンドだけをインデックスと判別するモデルを作成するため、インデックスに類似した隠れインデックスファンドをインデックスと判別することができない。この問題を解決するために、本論文ではOne-class SVMモデルの出力値に着目し、One-class SVMの出力を校正する新しい方法を提案する。提案手法を同一の指標をベンチマークとするファンド群に対して適用することで隠れインデックスファンドを見つけることができた。

  • 上田 翼, 和泉 潔, 坂地 泰紀
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 40-44
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    COVID-19の流行以降、サプライチェーンの混乱が経済や資産市場に大きな影響を及ぼしている。政策当局や金融市場関係者の間で、供給関連指標に対する関心は高まっているが、データの粒度や迅速性の点で課題が残る。そこで、本研究では、オルタナティブデータと深層学習手法を用いて、自動車サプライチェーンの異常度をリアルタイムで測定する指数の構築を試みた。構築した指数は、ミクロ的な生産障害を把握する上で有用であり、既存の統計指標とも一定の関係性があることを確認した。

  • 梅津 大雅, 中田 和秀
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 45-50
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    資産運用において,単一の銘柄に投資を行うことは非常にリスクのある行動とみなされている.そのため資産運用を行う際は,複数銘柄に分散投資を行うことが求められる.このように市場に存在する様々な金融資産に対して,どの資産にどれだけ投資するかを決定する問題はポートフォリオマネジメントと呼ばれている.ポートフォリオマネジメントの代表的なモデルとして,ポートフォリオの期待収益率の最大化と分散の最小化を行う平均分散法のような最適化のアプローチの手法が知られている.しかし,最適化の手法は,主に特徴量として平均と分散を使用しており,強い定常性を仮定している点が問題である.これらの問題に対して本研究では,強化学習の枠組みを用いてポートフォリオマネジメントを行う.強化学習は機械学習の分野の1つであり,コンピュータ上のエージェントが環境と相互作用を繰り返すことで,タスクの報酬を最大化する意思決定の方策を学習する.また定常性を仮定せず,長期的な依存関係を考慮した学習を行うため,資産運用と相性が良い.一方で,強化学習には2つの問題が存在する.その1つが金融市場のデータ不足である.強化学習を行う際は,多量の訓練データを必要とするが,金融時系列は時間に対して1対1にしかデータが増えない.また強化学習に入力する特徴量は,基本的に行動を決定する時点の情報のみを使用するが,資産運用に関しては将来の状態を考慮することが重要である.本研究ではこれらの問題に対処するために,CSDIによるデータ生成とLSTMによる予測を用いた強化学習フレームワークを提案する.CSDIはDiffusion Modelを基としたデータ生成手法の1つであり,金融時系列の分布を模した人工データを生成することが可能であるため,データ不足の問題を解消できる.また時系列予測の分野で高性能を記録しているLSTMによる予測特徴量を入力とすることで将来の状態を明示的に把握させた.これらの提案手法の性能を検証するために,ダウ・ジョーンズ工業株価平均の30銘柄を用いて定量評価を行い,提案モデルはベンチマーク手法よりも優れていることを確認した.

  • 平野 正徳, 南 賢太郎, 今城 健太郎
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 51-57
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    深層学習と価格時系列シミュレーションを用いてオプションのヘッジ戦略を学習するDeep Hedgingは,取引手数料などを考慮に入れたより現実的な取引戦略を立てることができるため,近年脚光を浴びている.しかしながら,その学習において活用される原資産価格のシミュレーターは,Heston過程などの特定の価格過程を使用することが多い.そこで,本研究においては,特定の価格過程を用いることなく,Deep Hedgingの取引戦略の学習を可能にする手法を提案する.提案手法では,架空の任意の価格過程を生成する生成器とDeep Hedgingが敵対的に学習を行う.提案手法を用いた場合,一切の価格時系列を与えることなく,通常のDeep Hedgingとほぼ同等の性能のヘッジを行えることを示した.

  • 坂川 翔祐, 森 直樹
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 58-65
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,深層学習技術が著しい発展を遂げており,金融分野では投資ポートフォリオの最適化や市場動向の分析などへの応用が進んでいる.しかしながら,金融市場は非定常性が高く単一の価格時系列に対する機械学習の適用が比較的困難となっている.そのため,目的に応じて複数系列の相対的な関係を予測することが重要である.この問題を解決するために,複数の金融資産に対する将来リターンのランク学習に着目し,Transformer を導入した資産配分決定モデルに基づく投資戦略を提案してきた.ランク予測性能の評価指標である Normalized Discounted Cumulative Gain (NDCG) と獲得リターンの双方を考慮して設計した損失関数を用いることで,収益性能に重点を置いた学習が期待できる.また,一般に深層学習モデルの構築には豊富なデータ量と適切な正則化が必要であり,観測可能なデータが限られている金融分野では様々な疑似訓練データの生成手法が提案されている.本研究では,Computer Vision 分野で利用されている変換ベースの Data Augmentation に対する自動最適化手法に着想を得て,熱力学的遺伝アルゴリズムに基づく時系列データの拡張方策探索に取り組み,これまでの提案モデルの学習に適用する.実際の市場データを利用した数値実験により,提案する投資戦略の有効性を示す.

  • Wu Haotian, Zhang Chenghuan, Han Dongli
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 66-71
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    現代社会においては、科学技術の成果があらゆる場面で活用され、企業に様々な影響を及ぼしている。企業価値と企業における研究開発との関係について従来より研究されてきたが、研究内容まで細かく分析したものが少なかった。特に、中国を初めとした新興国は研究開発の面で大きな進歩を遂げている割には、この点についてはあまり研究されてこなかった。本研究では、中国のハイテク企業であるテンセントとバイドゥの特許データ、市場価値データと決算報告データを利用し、研究開発の内容と企業価値を表すトービンqの関係を分析するための線形回帰モデルを構築した。その結果、技術密集型企業では、研究開発の範囲を限定することによりq値を上げることができるかもしれないことが分かった。

  • 澤木 智史, 仲山 泰弘
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 72-77
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,テキストマイニング技術を用いて中央銀行が公表する文書を解析し, 中銀の政策スタンスを評価する手法を提案する.主要国中銀の金融政策は広く金融市場の動向やリスク性資産の価格付け, 実体経済に対しても大きな影響を与えることから,市場参加者は中銀の将来の金融政策見通しの変化をより的確に捉えようと試みている.公表される文書は中銀にとっても市場との対話のための重要な手段であることから, 文法構文や表現について細部まで推敲されたものであり, 投資家はより正確に中銀の政策スタンスについて読解することが求められる.中銀文書へのセンチメント分析は従来から実施されてきたが,ニュアンスの意図的な変化まで明示的に捉えることは難しかった. 我々はゼロショットテキスト分類による含意判定手法を用いることで,未知の経済環境に対しても同一モデルを用いて連続的に評価を行うことを企図し, 2021年以降のインフレ率急上昇に伴うFRBの金融引き締め局面について検証を行うことで, 政策変更に向けたFRBのコミュニケーションの微妙な変化を捉えることを試みた.

  • 岩間 太, アーノ 有里紗, ホサイン マルフ, 竹内 幹雄
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 78-85
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本論文では、自然言語処理におけるstance detectionを用いて、FOMC声明文から金利動向に関する中央銀行のスタンスを示す指標を算出することを試みる。FOMC声明文はFOMCの直後に発表されるが、約3週間後に発表されるFOMC議事録と比較して比較的短い簡潔な内容を持つ文書であることが特徴の一つである。我々が,stance detectionを用いる目的は,FOMC声明文のような比較的簡潔な文書が粒度の細かいテーマに対してどのようなスタンスをとっているかという情報を取り出し易くするためである.過去約10年間における金利変動との相関を予備的に分析した結果、FOMC声明文から得られるいくつかのテーマ(特に政策金利の変化と支出の強さ)に対するスタンス指標は、単純なセンチメント指標よりも将来の政策金利や短期金利の変動と強く関連していることが示された.

  • 小島 湧太, 関口 海良, 中田 喜之, 吉野 貴晶, 杉江 利章, 夷藤 翔, 大澤 幸生
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 86-93
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    現在, ロシアのウクライナへの侵攻などの地政学リスクの重要度が, 金融市場で高まりつつある. 地政学リスクは, 金融市場において負の影響を与える要因の一つと言われており, 定量化が大きな意味をもつ. 一方で, 地政学リスクは多くの曖昧性を含んでおり, 国ごとの地理的・歴史的背景や時代によってリスクの具体的な内容が異なってくるため, 国・時代によって柔軟にリスクの具体的内容を変更できる定量化手法が必要である. 本研究では, Word2vecによる単語の分散表現を用いた, 各国に適用可能で定期更新可能な, 地政学リスク定量化手法を提案する. 日本の新聞データを用いて定量化を行った後, 金融市場との関連性を分析して, 提案手法の有用性を評価した.

  • 細川 蓮, 上田 健太郎, 諏訪 博彦, 梅原 英一, 山下 達雄, 坪内 孝太, 小川 祐樹
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 94-99
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    金融指標の一つとして,ボラティリティ・インデックス(以下,VI指数)がある. VI 指数は,金融市場における価格の変動可能性を示している.仮に,VI 指数の上昇を予測できれば,投資家の投資リスクを低減することができる可能性がある.一方で,人々の投資行動には,社会の出来事や人々の気持ちが影響し,VI 指数にも関連している可能性がある.そこで,本研究では,社会の情勢を表す新聞と投資家心理を表すインターネット株式掲示板を用いて,VI 指数の上昇を予測するモデルを提案する.

  • 門脇 一真, 木村 泰知, 加藤 誠, 近藤 隆史, 乙武 北斗
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 100-105
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    我々は,有価証券報告書(有報)に含まれるさまざまなタイプの表の理解を目的に,表構造解析を行うタスクを計画している.有報にはタクソノミがテキストブロックとして定義された箇所があり,特に非財務情報を表現する表には様々なタイプが含まれる.既存研究を参考に有報の表の各セルをヘッダ,属性,データといったクラスに分類した結果,既存研究で分類された関係表,エンティティ表,行列表などのいずれのパターンにも分類されない複雑な構造の表が見られ,さらにそれらの構造がいくつかのパターンに分類できた.本稿ではまず,各セルの分類方法と,その結果発見された表構造のパターンについて報告する.これらのうちセルが正しく分類できた表については,NTCIR-17 UFOタスクの表データ抽出(TDE)サブタスクでアノテーションデータを公開し,評価型ワークショップとして取り組めるようにする予定である.本稿ではこのタスクのデータ形式,評価方法についても取り上げる.

  • 河南 直希, 関 洋平
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 106-113
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,投資や企業経営の分野でESG情報の重要性が増大している.ESG情報は,様々な評価会社によりスコア化されたものが比較され,投資判断に用いられるが,ESGスコアの根拠は不明瞭なものが多い.本研究では,ESG分類の他にESG極性分類の属性を文に自動で付与することで,ESGスコアの根拠として考えられるテキストを抽出する.具体的には,有価証券報告書に対しアノテーションを行ってESGラベル分類データセットを作成し,作成したデータセットに対しBERT, RoBERTa, ELECTRA 等の事前学習済み言語モデルをファインチューニングすることで各属性の分類モデルを構築する.その結果,BERT を利用したモデルの分類精度が最も高く,ESG分類についてはF値のマクロ平均で0.857,ESG極性分類については0.782となった.また,未知の企業の報告書を自動分類し,予測確率でフィルタリングすることで,ESGスコアの根拠となりうる文が一定の精度で抽出できることを確認した.

  • 河村 康平, 酒井 浩之, 永並 健吾, 高野 海斗, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2023 年 2023 巻 FIN-030 号 p. 114-119
    発行日: 2023/03/04
    公開日: 2023/03/04
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,文とページの2つの情報に対して階層的にアテンションを用いた深層学習モデルにより,解釈性を考慮して統合報告書を自動評価する手法を提案した.具体的には,GPIFによる統合報告書の外部評価を利用して,投資家評価のラベルが付与されたデータセットを新たに構築した.さらにページ順序を学習するBi-LSTM層,文とページに対する2つのアテンション層を持つ深層学習モデルを提案した.評価実験の結果,提案モデルは学習時に現れない企業の統合報告書に対してF1-score 0.847の分類性能を得た.考察では,実際にモデルのアテンション層の重みを可視化することで,モデルの注目情報と投資家の評価基準が概ね一致することを確認した.またデータセットが持つバイアスを考慮して提案手法の実用性を検討した結果,学習済み,および未知の企業の統合報告書に対しても適切に自動評価が可能であることを示した.

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