人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
景気ウォッチャー調査のデータセット構築と物価センチメント分析
鈴木 雅弘坂地 泰紀
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2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 109-115

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抄録

本研究では,内閣府が実施する景気ウォッチャー調査のテキストデータに着目し,大規模なデータセットを構築するとともに,このデータセットを基に物価センチメント指数(PSI)を算出する.景気ウォッチャー調査は,全国の経済動向に敏感な人々へのアンケート調査であり,景気に対する現状認識や先行きの見通し,その根拠となる具体的なコメントなどが含まれている.これまで,景気ウォッチャー調査は主にDiffusion Index (DI) などの指標の算出に利用されてきたが,データ収集や抽出が容易ではなかったことから,テキスト情報の活用は十分に進んでいるとは言い難い.本研究では2024年5月時点までのデータで,テキスト情報を含む約30万件の現状判断データと約30万件の先行き判断データから,利用しやすい形式のデータセットを構築する.これらのデータを用い,関連分野分類,センチメント分類,判断理由分類の3つの文分類タスクを定義し,いくつかの言語モデルで評価実験を行う.毎月公開される調査結果を自動でデータセットに統合し,常に最新のデータセットが利用できるようなフレームワークを構築した.さらに,当該データセットに含まれるコメントの分野や回答者の業種などの情報によって区分したコメントを,大規模言語モデル(LLM)を用いて価格動向を分類することで,詳細に区分したPSIを構築する.我々が構築した消費者向けPSIは,既存の消費者物価指数に対して先行研究より高い相関を示した.

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© 2025 著作者
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