2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 48-55
本研究では、実務的にも学術的にも重要な問題であるポートフォリオ最適化を考える。従来のポートフォリオ構築手法である平均分散法やリスクベースのポートフォリオには、次の課題が存在する。平均分散法は、特定の銘柄に過度に集中してしまう問題があり、十分な銘柄分散が行われない場合がある。また、リスクベースのポートフォリオ構築手法は、期待リターンを考慮しないため、ポートフォリオ全体の効率性が低下する可能性がある。そこで、本研究ではこれらの課題を解決するために、リスクベースのポートフォリオである最小分散ポートフォリオに重み付きTsallisエントロピーを正則化項として導入した新たなポートフォリオ構築手法を提案する。Tsallisエントロピーは、Shannonエントロピーの一般化された形式であり、これを修正することで、ポートフォリオのリスク、リターンおよび銘柄の分散度を考慮した資産配分が可能となる。また、理論的には、提案手法は凸最適化問題として定式化され、目的関数が強凸性を満たすため扱いやすい。さらに、提案手法は、Tsallisエントロピーのパラメータを調整することで、等ウェイトや最小分散、リスクパリティ・ポートフォリオといったポートフォリオを復元できるため、これらのポートフォリオの一般化になっている。さらに、Long-Shortポートフォリオも自然に構築することができる。最後に、実データを用いた実証分析により他のリスクベース・ポートフォリオとパフォーマンスを比較し、提案手法の有効性を確認する。