主催: 人工知能学会
会議名: 第100回言語・音声理解と対話処理研究会
回次: 100
開催地: 国立国語研究所 講堂
開催日: 2024/02/29 - 2024/03/01
p. 122-127
本研究では謝罪表現が持つとされる感謝の機能に注目する。これまでの研究では「すみません」が感謝の意味を持つとされてきたが,実際の会話ではそれにそぐわない現象が見られる。その一つが感謝・謝罪表現の併用であり,そこでは「すみません」系だけでなく「ごめんなさい」系の表現も使用されている。この併用事例を起点に本発表では二つの問題に取り組む。一つは,感謝をする場面において,謝罪表現と感謝表現それぞれにどのような相互行為上の機能が備わっているのか,もう一つは謝罪表現間でどのような機能の違いがあるのか,これらを会話分析の視点から明らかにする。その結果,謝罪表現は相手の自発的な与益行為への気づきや対応が遅れた際に用いられ,「すみません」系は感謝表現産出のタイミングと与益行為の完了点の調整に,「ごめんなさい」系はより大きな遅れに対応し,感謝表現と併用することで,与益行為への応答として構築されることが分かった。