抄録
従来の書かれた文字を分析する書字評価手法では,そのプロセスや連続性を明らかにできなかった。そこで,本研究では小学1〜6年生の615名にデジタルペンを用いて文章の書き写し(視写)を行い,その書字行動を記録した。書字行動の停留時間を抽出して測定し,文字間停留と文節間停留の差を個人内で比較することで,意味のまとまりである文節を視写に利用しているかを検討した。両者に差がある児童を文節利用群,差がない児童を非利用群とし,各群に含まれる児童の割合を学年ごとに算出し,カテゴリー間の差を検定した。その結果,2〜5年では文節利用群が多く,1・6年では非利用群が多かったことから,1・2年生の段階で意味のまとまりを活用して情報入力を行うようになると考えられた。また,停留時間から書字動作のまとまりを検討し,それに基づいて書字パターンを1文字ずつ書き写す「粒書きパターン」,ある程度のまとまりで書き写す「まとまり書きパターン」,連続して書く連続書きパターンに分類した。その結果,1〜3年生では粒書き・まとまり書きパターンの児童が主流であったが,4〜6年生では連続書きパターンの割合が高かった。したがって,6年生では連続して書くことができるために,意味のまとまりで停留しないと考えられた。また,6年生でも粒書きパターンの児童が5.6%存在し,この児童に関して書字困難との関連を検討する必要性が示唆された。