主催: 人工知能学会
会議名: 第103回言語・音声理解と対話処理研究会
回次: 103
開催地: 早稲田大学 40号館 グリーン・コンピューティング・システム研究開発センター
開催日: 2025/03/20 - 2025/03/22
p. 108-113
本研究は、日本語会話における「は?」という短い反応表現が多様な相互行為上の働きを担うことを、会話分析の手法を用いて明らかにした。分析から、「は?」は「意味不明さ」を主張することで、以下の三つの異なる相互行為を達成することが示された。第一に、先行発話の理解が困難な場面で「は?」を用いることで、発話者に説明や言い換えを促す修復開始としての働き。第二に、相手の立場や評価に対して「は?」を用いることで、「受け入れがたい」という挑戦的なスタンスを示し、対立を際立たせる働き。第三に、語りの展開において「受け入れがたい」内容に対して「は?」を用いることで、語り手の立場に共感を示し、物語の進行を支援する協調的な働き。これらの知見は、一見個人的な感情表出に見える「は?」が、実際には会話参加者間の理解や立場の調整を行う戦略的な相互行為資源として利用されていることを示唆している。