人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会
Online ISSN : 2436-4576
Print ISSN : 0918-5682
104回(2025/9)
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子どもの自然会話をどう集め、どう読み解くか—言語社会化研究における方法的課題と実践
尾崎 萌子
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会議録・要旨集 認証あり

p. 25

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抄録

子どもの自然発話データを収集し、社会的・文化的な文脈の中で言語使用の実態を明らかにすることは、社会学、心理学、言語学、人類学など多くの分野にとって重要な課題である。しかし、自然発話データの収集は、量的・質的な両面において多くの困難を伴う。特に量的分析を可能にする十分な規模のデータを得るには、そもそも参加者を集めること自体が容易ではなく、さらに子どもを対象とする場合には保護者の理解と同意を得る必要があり、倫理的配慮も含めて慎重な対応が求められる。本講演では、こうした困難な状況下で、いかにして子どもを対象とした自然会話データを収集し、質・量ともに信頼できるコーパスを構築するか、その実践的な手法について紹介する。具体的には、倫理的配慮を前提とした研究デザインの工夫、被験者および保護者の負担を最小限に抑えつつ、自然な発話を引き出すための場面設定や収録方法、さらに収集したデータを効率的かつ多面的に分析するためのツールとして、MAXQDA等のソフトウェア活用についても概説する。また、実際に登壇者が行っている、日米の親子による絵本の読み聞かせ場面を対象としたデータ収集と分析の取り組みを紹介する。この研究では、親子の自然なやりとりを通して、子どもが言語を媒介として社会の一員としてふさわしい行動や価値観を学び、同時に自らも社会的関係に働きかけていく「言語社会化」のプロセスに着目している。講演では、こうした視点から見た日本人とアメリカ人の親子の会話の特徴や文化的背景の違い、さらには子どもの社会的・情動的発達に与える影響について、現時点で得られている知見を報告する。

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