抄録
ツクネイモ栽培では,種芋の定植を手作業で行うため,作業能率が低く栽培面積の拡大による収益の増加が困難な現状にある。本報では,種芋を定植する2条の開閉式ホルダ部,平高畝を作成するロータリ,種芋ホッパで構成したツクネイモ用種芋移植機を試作し,定植作業の省力化技術を検討した。
ツクネイモ用種芋移植機は,慣行作業と同等な畝の作成と種芋の定植を同時に行うため,作業能率が2.2h/10aとなり,慣行作業と比較して省力化率が60%であった。種芋は,株間40cm,深さ7cmで定植され,その92%が適正な向きであった。ツクネイモ用種芋移植機は,負担面積が8.8ha,損益分岐点面積が7.8haと算出され,負担面積の範囲内で作業可能である。移植機を用いた定植作業では,背部と下肢部の作業姿勢を改善するため,慣行と比較して作業姿勢の改善が不要と評価される割合が44%増加し,作業負担度を93%減少した。ツクネイモ用種芋移植機の利用は,慣行栽培と比較してツクネイモの成品収量を1.4倍,出荷規格品構成割合を1.2倍に増加した。また,移植機を使用した生産者は,栽培面積を1.2~2.0倍まで増加する意向を示した。