抄録
装軌トラクタのけん引性能を解析するに当って, 履帯による土の変形状態と土の持つ力学的性質とから現象論的な解析を試みている。まず, 履帯による土の変形をモデル履帯と強制すべり装置を用いてとらえ, その結果以前に示した単純なモデルシユーの場合の土の変形と類似していることを見出した。さらにこれらの変形パターンを基礎にして, 土のせん断応力特性及び1履板 (cleat) にかかる荷重, 土の反力, 土の重量等の力の平衡条件から, モデルシユーのけん引抵抗及びモデル履帯の前進力を算出する理論式を提示した。この式による計算値は, モデルシユーの最大けん引抵抗についての測定値とよく一致し, 土のせん断変形パターンに基づく解析の有用性を示している。又モデル履帯について計算された前進力―すべり率曲線と実測のけん引力―すべり率曲線の比較を行ない, 特に理論式中の変位常数の値に問題があることを指摘している。