抄録
寒冷な圃場で, 野菜の凍害を防ぎながら, 収穫を遅らせることは, その分だけ, 貯蔵施設等でのエネルギー節減になる。この考え方にたって, まず第1報で「凍害の発生と進行」を解析し, 5品目の野菜の一般的貯蔵限界日を示した。「凍害の人為的誘引」の第2報では, ドリップを指標として, ニンジンとキャベツの耐凍性の大きいことを確かめ, 第1報の内容の追試を行った。第3報の「ナガイモの品質保持」は, 圃場越冬の比較的容易なナガイモを例にとり, 貯蔵中の粘度低下と甘味増大とが地温に影響されることを示すものである。以上のような農産物貯蔵の省エネルギーのための基礎資料を得たので一連の報告をする。
第1報で, 最低気温に対する根菜の最低品温が, 屈折点を持つ直線になること, 根菜と葉菜の冷却速度が, それぞれ0.1, 0.5℃で, とくに, 根菜は超緩慢凍結になること, 凍害は見掛けの弾性率と含水率の低下をきたすこと, 試料の復水性からも凍害の進行を知り得ること, ナガイモは越冬できる一方, ニンジンは若干の培土で12月の貯蔵限界を, さらに大きく延長できること等を報告する。