抄録
呼吸不全に対する膜型肺補助循環の治療成績が低い原因の1つに, 肺を含め生体に及ぼす影響に関する知見の不足がある。そこで, 成犬に閉鎖回路を用いたV-Aバイパスによるシャント率0.3の補助循環を3時間(I群), 6時間(II群)及び28時間以上(III群)施行し, 生体肺に及ぼす影響を検討した。動脈血酸素分圧及び炭酸ガス分圧は補助循環の前後で3群共有意差なかった。空気吸収下肺胞動脈血酸素較差及び肺内シャント率はI群及びIII群の前後で差がなく, 純酸素呼吸下で肺胞動脈血酸素較差は両群共に軽度開大し, 肺内シャント率はIII群で軽度増加した。I群において, 静肺コンプライアンスは術後7日まで漸減, 以後回復傾向を示し, 一酸化炭素肺拡散能は術後全例低下し, 7日以後回復した。全群で, 平均肺動脈圧, 心拍出量及び全肺血管抵抗は前後で差がなかった。組織学的には軽度の動脈周囲浮腫を認めるのみであった。これらを考慮して臨床における適応を決めねばならない。