抄録
近年すぐれた利尿剤等の治療により腹水症のコントロールは従前に比し容易になってきているとはいえ治療に難渋する症例にも多々遭遇する。今回, 我々は血漿分離膜(東レーPLASMAX)を用い膜分離法により, 腹水を処理, 再静注法を行った。対象とした患者は良性腹水症2名, 悪性腹水症5名であり, 循環中のトラブルは何ら発生せず容易に施行可能であった。腹水処理前後の腹水の細胞診の結果, 除癌細胞が可能であることが判明した。処理前後の腹水の生化学的データには何ら変化をみとめず又電解質についても同様であった。副作用は, 腹水再静注後, 一過性の発熱をみた症例もあったが, 消化管出血等の重篤な副作用の出現はみなかった。本分離膜を用いた腹水処理, 再静注法は, 遠心分離法に比し容易に施行可能であり, またかつ除癌細胞も可能であり, 難治性腹水症治療の有効な手段であると思われる。