抄録
1980年1月から1982年3月までの開心術404症例中, 術後1週間以内に血清クレアチニン値が2.0mg/dlを超える49症例(12.1%)を腎不全症例とした。これらに対し, 内科的ないしそれに引き続く腹膜透析(PD)を主とする治療を行ったが, その治療成績を検討し, 低心拍出量症候群(LOS)の有無, 尿量, BUN値, 心疾患別に比較検討を行った。
(1)67.3%が腎不全より脱却したが, PDないし血液透析(HD)を要した17症例についての成績は不良(23.5%)であった。(2) LOSの合併例では尿量の如何を問わず成績は不良(21.0%)であった。又, LOSの非合併例では予後は良好(96.6%)であるが, BUN値が100mg/dl以上の値を10日間持続する症例では, 尿量が維持されていても, 内科的療法ないしPDでは限界があった。(3)先天性心疾患ではLOSを伴い, 回復率は悪いのに対し, 後天性心疾患ではLOSを伴わない症例が多く, 回復率は良好であった。(4)腎不全症例の回復率及び生存率は, LOS・尿量・BUN値に大きく影響されていた。