抄録
圧電性などを利用して人工臓器への応用が検討されつつあるポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルムをラットの皮下組織に埋植し, 組織反応及びPVDFの変化について2年間にわたって検討した。比較試料としてポリスルホン(PS)のフィルムも同時に埋植した。12月までの組織反応のパターンは, PVDF, PSともほとんど差はなく, 低毒性材料に共通するものであった。しかし, 12月以後では, 材料周囲に形成される線維性被膜の厚さにかなりの違いを生じた。PSでは被膜厚さが増加するような傾向は見られなかったのに対し, PVDFでは明らかに増加傾向にあり, 全体的に被膜が厚くなった。被膜が肥厚する原因の一つとして, PVDFからの溶出物が疑われた。長期にわたる線維増生傾向は, インプラント用材料としては通常あまり好ましくないと思われる。PVDFの引張り強さ, 伸び率は, 2年間の埋植ではほとんど変化せず, 安定した性質を示した。