抄録
血液凝固第XIII因子(F XIII)とThrombin(T)をGelatin sponge(G)に固定した新しい止血材料“GT XIII”を心臓血管手術症例20例に使用しその効果を検討した。対象は冠動脈バイパス手術14例、弁膜症手術6例で、用いた出血部位は冠動脈―伏在静脈グラフト吻合部7例、大動脈―伏在静脈グラフト吻合部3例、大動脈切開創縫合部2例、再手術時の心表面癒着剥離部からの出血2例、右室表面のペースメーカーリード刺入部3例、内胸動脈剥離後の胸骨裏面からの出血3例であった。出血の状態は線状噴出3例、放置出来ない程度の滲み出し17例で、前者に対しては“GT XIII”の止血効果は認められなかっだが、後者では完全止血6例(35%)、滲み出し量の明らかな減少9例(53%)、無効2例(12%)であった。今回の検討から“GT XIII”の心臓血管外科領域における有用性を認め、今後の問題点についても言及した。