主催: 一般社団法人日本科学教育学会
会議名: 日本科学教育学会第43回年会
回次: 43
開催地: 宇都宮大学
開催日: 2019/08/23 - 2019/08/25
本稿の目的は,数学教育研究に内在する暗黙的な価値観を反省するための,新しい研究方法論の開発である.特に本稿では,これまでの数学教育研究において,学習者に対する動機付けとしての試験の役割が否定的に捉えられてきた経緯を反省することを1つの問題意識として,試験の役割の肯定的側面を発見するための研究方法論を具体的に例示する.本稿は,大きく分けて次の3つの内容からなる.まず,推論主義と呼ばれる哲学的視座に基づきながら,計量言語学的手法によって分析可能な概念使用のモデルが提案される.次に,証明の学習で楽しかったことについての中学2年生の自由記述を定性的に分析することで,数学教育における「試験」の肯定的役割が3点示唆される.最後に,この定性的分析の結果を,定量的分析に接続するための方法論を具体的に論じる.今後の課題としては,この方法論の多様な概念への適用可能性についての議論が残された.