抄録
癌組織内へ直接刺入投与することをねらった徐放性抗癌製剤5-FU・ポリ乳酸複合体針(F-PLA針)を開発し, 実験的検討を行なった。F-PLA針は, 生体内で分解吸収される高分子ポリL-乳酸を基剤に5-FUを重量比で50%含有し, 生体組織内へ刺入できるだけの十分な強靱さを有している。5-FUの徐放期間は, ラットの皮下で約1か月間, ラットの肝内および腫瘍内で約2週間と, 部位によりF-PLA針の徐放性に差がみられた。F-PLA針をラットの肝および腫瘍内へ埋え込んだ後の局所の組織内5-FU濃度は長時間高値を維持し, 腫瘍内でより高値を示した。F-PLA針投与による全身的な副作用は, ほとんど認めなかった。AH130腹水肝癌腫瘍を用いた抗腫瘍実験では, F-PLA針投与群で腫瘍の増殖が著しく抑制された。今回の検討より, F-PLA針の徐放性抗癌製剤として有効性が示された。