人工臓器
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制癌剤徐放機能を有する抗血栓性高分子材料の調製とその評価
山田 明夫片岡 一則岡野 光夫由井 伸彦桜井 靖久村山 健田中 昌和加藤 利佳近藤 保讃井 浩平緒方 直哉
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1986 年 15 巻 1 号 p. 222-225

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抄録
本研究においては, 抗血栓性を有するセグメント化ポリウレタンウレア(PEUU)の錯長を変化させることにより, マイトマイシンC(MCC)の放出速度を制御し, 膜厚差により拡散係数を変えたり, 長期持続放出を可能にしている。このモノシリツク型のデバイス中の薬剤は分子レベルでマトリツクス中に分散している溶解型である。温度をパラメータとしたMMCの放出挙動では, PTMGが2000~3000附近で極大値を示し, 30℃のDに比較して40℃のDは, TM-1では4倍となる。平均分子量の増加にともない, ガラス転移度Tgは低下し, ミクロ相分離構造は良くなり, 膨潤率も大きくなり, 拡散係数は大きくなるはずであるが, かならずしもDが大きくならないのは, ポリマー内の分子が拡散するholesやloosenessが少ないと, 活性化エネルギーが低くくとも, 分子は拡散しにくいし, 融点が増加すると結晶性が強くなるので薬剤が動きにくくなり, Dが大きくならない。以上のことから, PTMG鎖長を変えることにより長期間にわたる放出制御が可能で, しかも抗血栓性を有し, 薬剤透過性, 良好な力学特性を兼備した, 制癌剤を複合する担体としてPEUUは有用な材料と考える。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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