抄録
IPN手法を用いて作られたポリウレタン・シリコーンポリマー複合体KIIIにおいて, 組成変化と抗血栓性の関係を実験的に検討した。KIIIの添加シリコーン量と架橋剤量を段階的に変化させ, 5種類の組合せを作製した。これらでコーティシグしたチューブを用い, 実験犬で4時間の一時的体外バイパスを作製した。肉眼的・電顕的に血栓・血小板形態を観察し比較検討した。シリコーン中の架橋剤重量%を70%に固定し, KIII中のシリコーン重量%を2, 8, 14%と変化させた3者においては, 2, 8%のものが抗血栓性を有しており, 特に2%は優れていた。次にシリコーン重量%を8%に固定し, 架橋剤重量%を40, 70, 100%と変化させた3者においては, 40, 70%のものが抗血栓性を有していたが, 両者に差はなかった。組成変化による抗血栓性の相違は, シリコーンポリマーの総量変化, シリコーンポリマーの疎水性の変化, ポリウレタンの水素結合性の変化によるものと考えられた。