抄録
昭46年以来, 左心補助人工心臓の研究を行ない, 近年では10週までの生存実験が安定して得られているが臨床応用に際してはその信頼性を鑑みて, 東京大学の開発したシステムを用いて, 従来の機械的補助法の限界を越えた重症心不全に本法を行った。3例のうち冠血行再建術術後患者で本邦初の長期生存, 社会復帰を可能とした症例を経験し, 補助人工心臓の有用性を臨床的に確認した。補助心臓は将来の外科治療体系に大きな改革をもたらすものと期待されるが実地臨床応用にはなお解決すべき問題も多い。本法の補助効果は従来の機械的補助と較べるとはるかに強力であった。術後管理も施行以前に予想したものよりは安易であり, 本法の適用は多臓器障害を併発する以前の早期使用が望ましいと考える。
補助心臓使用時の自然心臓の機能評価法を臨床的に確立することが重要な課題である。今回の臨床ではUCG法による左室後壁ならびに大動脈の開閉状況及び薬物負荷テストが有力な情報となった。