抄録
ある特定の血球細胞を血液中から分離・除去する試みは, 近年, 成分輸血, 治療あるいは多くの基礎研究において重要な課題となっている。特に, 目的細胞に対して特異的な親和牲を有する吸着材を用いた分離・除去法は, 簡便, 迅速かつ効率的な処理を可能にするものであると考えられる。本研究では, リンパ球の亜集団であるBリンパ球に対する非生物学的なアフィニティリガンドを用いて, 単核球分画あるいは全血からのBリンパ球の分離あるいは除去を試みた。その結果, イムノグロブリン(Ig)に対してアフィニティを有するスルファチアゾール(ST)を固定化した吸着材は, 膜表面にIgを有するBリンパ球に対しても高い親和性を有することが観察された。また, 担体―リガンド間へのスペーサーの導入は, Tリンパ球の非特異接着を抑制し, 分離材の選択性を高めるのに効果的であることも明かとなった。このような分離材は, リガンドの多様化によって, 幅広い応用を実現できるものと思われる。