抄録
安定化ヘモグロビン(SHb)は、固形成分を含まずその分子サイズが赤血球に較べ著しく小さい酸素運搬体であり、微小循環の改善への応用が期待される。鎌状赤血球貧血での痛みの原因と考えられている低酸素分圧下の鎌状赤血球による末梢血管の閉塞に対するSHbの効果を明らかにするため、人工毛細管モデルによる検討0鎌状赤血球の形態変化の観察を行なった。あらかじめsickling化した鎌状赤血球で閉塞状態とした人工毛細管にSHbを加えた赤血球液を灌流することにより、人工毛細管からの血流量は対照群に比し数分間で有意に増加し、閉塞のない状態での灌流に近い値となった(Hct. 値20%)。更に鎌状化した赤血球にSHbを加えることにより、酸素分圧は上昇し、そのsickling比率が大幅に減少することが顕微鏡下で観察された(Hct. 値1%)。また赤血球変形能測定装置を用いた検討では、SHb共存下にある正常赤血球の変形能自身は大きな影響をうけず正常範囲内にあることが明らかとなった。