人工臓器
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細胞と人工材料との相互作用
血管壁細胞の接着及び伸展過程に関する研究
北村 たかね松田 武久阿久津 哲造
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1989 年 18 巻 1 号 p. 54-58

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抄録

ハイブリッド型人工血管を構成する人工基底膜の設計の基礎を得る為に血管壁細胞の材料表面への接着機構を検討した。最近、多くの細胞と細胞接着性蛋白質が最小接着活性部位であるArg-Gly-Asp (RGD)を介して接着していることが明らかになった。この合成ペプチドはレセプターに対し接着性蛋白質と競合的に働くと考えられる。そこでI型コラーゲンへの血管壁細胞(内皮細胞, 平滑筋細胞)の接着を合成テトラペプチド(RGD-Ser: RGDS)を用いて検討した。RGDSの添加により血管壁細胞のI型コラーゲンへの初期接着及び伸展は濃度依存的に阻害された。一方、接着した細胞に対するRGDSによる剥離効果は初期接着時において顕著であった。以上より血管壁細胞の接着・伸展にはRGDレセプター・リガンド機構が特に初期接着時に支配的であることが示され、人工基底膜の設計の基礎を与えた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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