抄録
種々の医用材料が、これまで再手術を行い易くするために代用心膜として用いられてきた。今回、現在入手しうる代用心膜のうち、どの材料が心膜癒着防止に適しているか実験的に検討した。代用心膜としてつぎの5種類を選んだ。すなわち、グルタールアルデヒド処理ウマ、ウシ、ブタ心膜、シリコンラバー、expanded polytetrafluoroethylene (EPTFE) 心膜用シートである。これらを雑種成犬の心膜の一部に置換した。ウマ、ウシ、ブタ心膜などの異種心膜は、組織学的にも器質化の所見が認められ、心膜癒着防止の目的には不適当と思われた。シリコンラバーは、癒着は少ないが、心外膜の反応が強いため、心臓表面の微細構造の識別を要する再手術には不向きと思われた。EPTFE心膜用シートは、癒着、心外膜の反応とも、特に優れた結果は得られなかったが、組織学的に器質化の所見を認めず、有用と思われた。