人工臓器
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小口径人工血管開発の動向
従来の問題点と今後の方向
笹嶋 唯博久保 良彦小窪 正樹和泉 裕一堀尾 昌司
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1990 年 19 巻 3 号 p. 1052-1055

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抄録

保存ヒト臍帯動脈(PHUV)、自家静脈、Solcograft-P、Bovine graft (Sawyer)、Sparks madril、Ovine collagen graft (omniflow)などの移植graftの解析から新しい小口径人工血管開発の方向を検討した。自家静脈の治癒過程を参考に条件を求めるならば、内皮細胞化とそのための必須の組成として基底膜(BM)の存在が指摘される,PHUVはBMを保持する部分の血液適合性は良好であるが、多くはそれを欠如し、吻合部内膜肥厚(AIH)が発生して閉塞する。AIHには2つの形がある。Compliance Mismatchは吻合部から5mm範囲の宿主動脈に限局したAIHを発生するがこの頻度は少ない。PTFEやPHUVに見られる通常のAIHは縫合線を含んでgraft側に1cmの範囲に見られるもので、graftの血液及び組織適合性に起因するものである。このAIHがSmooth surface人工血管の最大の問題であり、AIH防止には吻合部にneointimeを形成させる必要があるが、それには血液及び組織適合性兼備したBMの存在が不可欠と思われる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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