1990 年 19 巻 3 号 p. 1056-1059
理想的人工血管開発へのアプローチとして、抗血栓性、器質化特性、弾性特性の面から人工血管の性能評価を行った。検討対象として抗血栓性に優れ、ヒト動脈とほぼ同様の柔軟性を有する、segmented polyurethane graft (SPG)とexpanded polytetrafluoroethylene (EPTFE) graftとを用いた。抗血栓性の評価法として111I:diumoxineによる血小板シンチを応用し、人工血管表面に取り込まれる血小板countと血中血小板countとの比からグラフトの抗血栓性を比較した。柔軟性の検討としてレーザーによる微小変位計測装置を用いて移植前・後のグラフトのstiffness-parameter βを測定した。SPGはEPTFEと比較して血小板の付着は若干多い傾向を示したが有意差はなく、3ヵ月における開存性はEPTFE25%に対してSPG50%と良好であった。開存性には抗血栓性のみならず治癒特性が重要と考えられる。SPGの柔軟性は移植後3か月の時点でもよく維持されていた。