抄録
人工材料表面の抗血栓性の向上をめざしシリコーンにイオンを注入して表層を改質し抗血栓性の評価を行った。H+, N2+, O2+イオンを加速電圧150keV,注入量1~3×1017ions/cm2にてシリコーンロッドに打ち込み試料を作成した。抗血栓性評価は111In-tropolone-血小板を用い, ラット上行大静脈(SVC)に試料を留置しin vivo評価を行った。H+イオン注入試料留置では未注入試料に比べて試料への血小板の集積量が顕著に減少し, SVC, 心臓, 腎臓, 肝臓で減少を示し, O2+注入では試料およびSVCで顕著に減少し, また網内系臓器での抑制が観測され最も効果的であった。N2+では試料, SVCおよび網内系臓器で減少を示したが, H+, O2+に比べて低いものとなった。イオン注入により試料表層にはH+注入でOH, N2+注入ではOH, SiH, CH2, amine, O2+ではOH, SiH, CH2, カルボニル基等の官能基が生成された。これらより抗血栓性はイオン注入によるカルボニル基などの官能基の生成の効果により付与できるものと考えられる。