人工臓器
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肝実質細胞-非実質細胞混合培養によるハイブリツド型人工肝臓の高機能化
―レセプター仲介型人工マトリックスの臓器工学への応用―
戸辺 成四郎武井 由香久々宮 岳志小林 一清赤池 敏宏
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1992 年 21 巻 1 号 p. 217-221

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抄録
生体肝組織は、肝細胞と肝非実質細胞(NPC)とによって構成され、三次元的細胞社会を形成している。また、肝細胞の有する数多くの肝特異機能の発現や肝再生にも、肝細胞とNPCとの相互作用は重要なはたらきを担っている。それ故、肝細胞培養システムをハイブリッド型人工肝臓などに応用する為には、生体肝組織を構成する肝細胞とNPCとの混合培養システムを確立することが有用である。今回、我々はハイブリッド型人工肝臓の開発を目的として、肝細胞に特異的なアシアロ糖タンパク質のモデル材料として設計された人工基質材料であるPVLA (poly-N-p-vinylbenzyl-D-lactonamide)上でのラット肝細胞とNPCとの混合培養を試みた。肝細胞とNPCとの混合培養下において、肝細胞は顕著な多層集合体を形成した。この多層集合体を形成した肝細胞は、コラーゲン上の混合培養系での肝細胞に比ベアルブミン合成分泌能を亢進し、その機能を長期間にわたり良好に維持した。PVLAは、肝細胞のみを選択的に接着させ、NPCの初期の接着と増殖を極度に抑制した。この人工基質材料PVLAならではの特性が、肝細胞とNPCとの長期間安定な混合培養を可能にしたものと考えられる。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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