抄録
高分子材料との接触による血小板の活性化機構の解明を目的として、ポリスチレン・ラテックスとの接触による血小板の細胞質内遊離Ca2+濃度変化をthrombin、calcium ionophore (A23187)刺激時と比較しながら検討した。ラテックス刺激による遊離Ca2+濃度上昇は、benzyl alcohol処理血小板で抑制され、またserratia protease処理血小板では上昇速度がほぼ同様であったのに対し、dibucaine処理血小板ではほとんど認められなかった。このことから、ラテックスとの接触による遊離Ca2+濃度上昇はthrombinのようにreceptor-mediated pathwayによるものでも、A23187のように膜流動性上昇によるCa2+の物理化学的流入によるものでもなく、接触に起因した膜タンパク質と細胞骨格タンパク質とのnetworkの変化に関与した機構によることが示唆された。