抄録
低温収縮/高温膨潤の膨潤度温度依存性を有するポリアクリルアミド/ポリアクリル酸系相互浸潤網目(IPN)は、温度変化に応答して可逆的な低温OFF/高温ONの薬物放出を示した。低温への温度変化後、IPNは表面から収縮を開始する。この表面収縮層に注目して、薬物放出のOFF状態と表面収縮層の関係を調べた。収縮過程でIPNは収縮に伴い水の流出を起す。この水の流出が収縮層によって遮られた場合、ゲル内部に圧力が蓄積される。IPNの表面収縮層がこの強度に耐え得る場合には、温度変化と同時に薬物放出はOFF状態に変化する。内部圧力の方が表面収縮層に比べその力が大きい場合、収縮層は緻密な構造を維持することができず、内部圧力による大きな水、薬物の流出が生起する。すなわちゲルの敏速かつ完全な薬物のOFF応答には内部圧力に耐え得る表面収縮層の形成が必要であることがわかった。