抄録
無輸血開心術の際の低充填液量の人工肺への変更、ヘモコンセントレイターによる限外濾過、erythropoietin (EPO)投与による自己血貯血の増加などの効果を検討した。(1)輸血群(9例)は無輸血群(16例)に比し年齢が高く、術前自己血貯血量が少なく、体外循環時間、遮断時間が長く、心停止液使用量が多く、術中出血量、術後出血量が多かった。限外濾過除水量は多い傾向であったが有意の差ではなかった。(2)無輸血群の内、EPO(+)群はEPO(-)群に比し術前自己血貯血量が多く、術後出血量が少なかった。有意の差はないものの重炭酸ナトリウム総補正量が少なく、術後血中乳酸値の最高値が低く、術後の最低ヘモグロビン量が高い傾向であった。より安全に無輸血開心術を達成するために、EPO使用による自己血貯血800ml以上の確保、術中限外濾過による過度の血液希釈予防は有効と考えられた。