1992 年 21 巻 4 号 p. 1328-1333
グルコース濃度を感知するセンサー部位として多価水酸基含有化合物と可逆的な共有結合能を有するボロン酸基を導入した新規高分子材料を合成し, 新規インスリン放出デバイスとしての応用を検討した. ボロン酸基を導入したポリN-ビニルピロリドン誘導体(poly (NVP-co-PBA))は, ポリビニルアルコール(PVA)とのコンプレックス化により水不溶性のゲルを生成し, グルコースの添加によりゾル状へと転移した. ポリマーコンプレックス解離速度は, グルコース濃度が高いほど速いことが観察された. さらに, 生理的なpHにおいてのコンプレックス形成能の向上のために, アミノ基を導入した新規ボロン酸基含有ポリマーを合成した. このポリマーは, pH=7.4においても安定なコンプレックスゲルを形成した. このゲルに, FITC-インスリンをloadingし, 放出挙動を解析したところ, グルコース添加により, 放出量の顕著な上昇がみられ, グルコース応答性インスリン放出システムとしての基本特性を有していることが明らかとなった.