1992 年 21 巻 4 号 p. 1334-1338
血栓弁をより確実にかつ早期に発見するために必要な周波数分析帯域を検討した. 315Hzおよび2kHzのlow cut filterを備えた心音増幅器とシグナルプロセッサを使用し, 以下の3通りの人工弁音の周波数分析を行い比較検討した:(1)臨床例の人工弁音(2)空中にて手動で回転させ開閉した人工弁音(3)水流回路装置内での擬似血栓弁音. (1)いずれの方法においてもシリコンボール弁を除くと2~8kHz間に2~3のpeak(以下ピーク)を認め, さらにB-S弁とOS弁は8kHz以上にもピークを認めた. Occluderとhousingによる衝突音は3.5kHz以上のピークが主であり, 2kHz周囲のピークは血流に関与するものと思われた. (3)擬似血栓弁は10kHz以下の周波数分析で明瞭に診断できた. また擬似血栓の付着部位や厚さの変化が0~10kHz間の周波数分析で診断できた. (4)10kHz以上の成分は微小であった. 血栓弁の発見のためには, 従来通り0~10kHz間の周波数分析が有効である.