抄録
近年、免疫系の制御を目的とした体外循環法が注目を集めているが、温熱効果を利用した免疫抑制療法も将来の可能性を秘めた試みのひとつである。本研究では、多核白血球に対するin vitroでの温熱効果をその機能の可逆性をも含めて検討を行った。健常人末梢血より分離精製した多核白血球浮遊液を用いラテックス粒子とインキューベーションすることにより多核白血球の貧食能を評価する系を作成し、(1) 高温環境下での貧食能の変化について、また(2) 非可逆的な機能障害をもたらす温度と処理時間との関係を決定しようと試みた。その結果、(1) 環境温度44℃-30分あるいは46℃-10分の熱処理によりその機能は非可逆的に抑制されることが判明した。以上の結果は温熱療法のみならず、非生理的温熱環境下における生体反応を理解する上でも重要な意味をもつ基礎的データであると思われる。