抄録
人工材料表面の個々の細胞の遊走方向制御・配列制御を目的とし、光化学反応を用いて表面微細修飾した表面で細胞の遊走過程・配列を定量的に評価した。表面微細修飾は、光反応性であり且つ親水性である共重合体poly(m-azidostyrene-co-N, N-dimethylacrylamide)を培養用シャーレにキャストし、スリット幅20~130μmのフォトマスクを被せ、紫外光照射後、未露光部の共重合体を洗浄することにより行なった。この表面に内皮細胞を播種すると、細胞は未露光部の培養用シャーレが露出した表面のみで接着・遊走した。遊走過程を画像解析システム(PIAS LA-500)により解析すると、細胞が遊走できる幅はスリット幅に完全に一致し、平均移動速度は未処理の表面と同程度であった。また、単層充填の状態では、細胞は細長い紡錘形をし、大半がスリットの長辺と平行に配向していた。これらのことから、開発した表面微細加工技術により遊走方向が制御できること、細胞の配向制御及び二次元パターン組織化が可能であることが示された。