抄録
開心術にさいしての体外循環によりエンドトキシンないしリムルステスト陽性物質が高値を示すことは知られている。しかし, その原因ならびに生体に及ぼす影響については不明な点が多い。そこで, 成人開心術症例50例を対象として, エンドスペーシー法およびトキシカラー法をもちい術前から術後にかけてのエンドトキシン(Ex), β-D-glucanを測定した。体外循環中を通じてEx値は変動なく正常域にあったが, 充填液のExは8.3+/-10.0pg/mlとたかく正常域以上が12例にみられた。β-D-glucanは体外循環開始とともに増量し, 終了時には212.4+/-85.8pg/mlと最高値をしめした。この値と体外循環時間, 大動脈遮断時間との相関はみなかったが, 洗浄液, 充填液のそれは低値であり, この物質の由来は生体側にあるのではと推察された。また同時に測定したα2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体の変動はβ-D-glucanのそれと同じ傾向を示し, なんらかの関係があるのではと推察された。