抄録
全回路にヘパリン(Hep)化処理を施したECMOシステムを用いて、Hep非投与下でのECMOを行い、性能及び抗血栓性に関する耐久性を検討した。装置は遠心ポンプ、2.0m2ホロファイバー内部潅流型膜型肺、送脱血管、チューブより構成された閉鎖式システムで、血液接触面すべてにHep共有結合処理が行われている。雑種成犬12頭を用いて、流量500ml/minの極めて血栓を生じやすい条件で、12時間のV-V ECMOを行った。6頭でHep化処理システムを用いて全身Hep投与を行わず、他の6頭はHep化処理をしていない装置を用い全身Hep投与を行った。ECMO中の人工肺ガス交換能(酸素添加能、炭酸ガス除去能)、血小板数、血小板機能(凝集能、粘着能)は、両群問で有意差を認めなかった。ECMO後の人工肺、遠心ポンプの肉眼及び走査電顕所見では、両群とも血栓の付着をほとんど認めなかった。500ml/minの低流量下でも、本システムは良好な抗血栓性を示し、長時間のHep非投与ECMOの可能性が示唆された。