抄録
重症チアノーゼ性心疾患に伴う全身状態悪化を防ぐ目的で新生児用の静脈内血液酸素化装置を試作した。本装置はポリオレフィン中空糸100本から構成され最大径3.5mmである。本装置の酸素化能を検定回路にて測定した後, 雑種幼犬を用いて移植実験を行った。付加酸素量は流量に比例して増加したが, 炭酸ガス除去能は装置内酸素流量が一定であるため流量増加により効率が低下した。また低酸素飽和状態では酸素移動効率増加がみられた。動物実験では, 肺動脈血酸素飽和度の上昇に伴い動脈血酸素飽和度, 大腿静脈血酸素飽和度が上昇するため肺動脈血酸素飽和度変化は大きくなった。静脈血酸素飽和度が20%では体重当り約1mlの酸素付加が得られた。試作した静脈内血液酸素化装置は酸素化能が小さいものであるが, 低酸素状態によりアシドーシスが進行するような危機的状況下では簡便に実施できる有用手段と考えられた。