1994 年 23 巻 2 号 p. 408-411
臨床における透析膜の性能をタンパク質の吸着のない膜の評価とタンパク質の吸着特性から推算できれば透析器の設計に非常に役立つと考えられる。そこで、タンパク質の吸着による膜構造の変化と荷電状態の変化がイオンの透過性に与える影響を検討するために自作のミニモジュール(長さ10cm、中空糸本数200本)を用い、チトクロームCまたはα-ラクトアルブミンが平衡吸着した後のリン酸水素イオン(濃度3.33mEq/l、pH7.4)および非電解質である尿素(10mg/dl)の溶質透過係数の変化を透析実験によって測定した、実験は、37℃のもとで並流操作によって行った。その結果、リン酸水素イオンの溶質透過係数はチトクロームC吸着後には増加し、α-ラクトアルブミン吸着後には減少した。尿素の場合はどちらの場合も若干減少した。以上より、イオンの膜透過にはタンパク質の吸着による膜構造の変化だけでなく荷電状態の変化も影響することがわかった。