日本森林学会誌
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論文
競合植生によって異なるスギ造林地の下刈り要否の判断基準
鶴崎 幸 山川 博美伊藤 哲重永 英年佐々木 重行
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2020 年 102 巻 4 号 p. 225-231

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抄録

スギ人工林の下刈り要否の判断基準を提示することを目的に,福岡県八女市において毎年下刈りが行われた競合植生の異なる林地の植栽木と競合植生を多点調査した。その結果,下刈り1年後の競合植生の再生高は優占する植物タイプにより異なり,ススキタイプの再生高が他の植物タイプより高かった。一方,出現頻度の高かった3種(ススキ・ヌルデ・アカメガシワ)では,各々下刈りの累積回数による再生高の変化は認められなかった。スギ樹冠の梢端部が競合植生による被覆から抜け出すスギ樹高は競合植生の類型によって異なり,ススキが優占する植生類型よりもその他の方が低かった。以上より,毎年下刈りによる競合植生の再生高の低下はほとんどなく,植物タイプごとの再生高の違いが要因で,植生類型ごとに下刈り要否の判断基準は異なることが明らかになった。下刈り直前に林分内のスギ植栽木の本数割合90%以上が競合植生より高くなるには,前年の成長休止期のスギ樹高が,ススキが優占する植生類型で2.2 m以上,それ以外で1.4 m以上必要と評価された。スギの多くが競合植生に覆われない状況を維持するためには,目安としてこの樹高まで毎年下刈りが必要と考えられる。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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