人工臓器
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血管内皮細胞による抗凝固性の獲得
―in vivoにおける培養内皮細胞の抗血栓性の検討―
中島 博貝原 真鈴木 嘉昭
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1994 年 23 巻 3 号 p. 622-628

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抄録
優れた抗血栓性を有する血管内皮細胞によるハイブリッド化は、小口径人工血管の生体適合性の付与に有力な手段である。内径1.3~1.5mmガラス基材ハイブリッド人工血管を雑種成犬の大腿動静脈に置換して培養血管内皮細胞の抗血栓性を検討した。動脈置換群は置換後6時間でも全例が開存し、肉眼的および走査電顕所見で明らかな血栓形成を認めず、内皮細胞の優れた抗血栓性が示された。静脈置換群は平均流速が動脈群と比較して有意差がないにも関わらず重力方向下面に肉眼的血栓形成を認めた。この差異は、静脈内での重力による血球成分の不均等分布が流速を低下させ、拍動流と比較して勢弾力の小さい層流による血液凝固への影響によると考えられた。この流れの問題は血管内皮のconfluencyや安定性、また基材の抗血栓性と同様にハイブリッド人工血管開発の上で十分に検討すべき課題であると考える。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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