抄録
創傷被覆材としてのガーゼの最大の欠点は創傷面と強く固着することである。ガーゼに温度感応性ポリマー(PNIPAAm)をコーティングし, 剥離時, 下限臨界共溶温度以下に冷却するとPNIPAAmが溶出し剥離が容易になるのではないかと推定し, ラットの全層皮膚欠損創に用いた。その結果, 未コーティングガーゼおよびソフラチュールは4日間留置で創傷面と固着し, 剥離するとガーゼに肉芽組織が付着し, 肉芽組織の断裂がみられた。トレックスガーゼは7日間で剥離困難となり, 無理に剥離するとガーゼ面に肉眼的にも肉芽組織が付着し, 肉芽組織の断裂および大量の出血がみられた。PNIPAAmコーテ
ィングガーゼは7日間留置でも剥離は容易であり, 光顕的にもガーゼに組織片の付着はなく, 創面も平滑であった。14日間では創縁で剥離がやや困難であった以外, 7日間留置とほぼ同様の所見であった。