1994 年 23 巻 3 号 p. 854-857
Liposome包埋ヘモグロビン(Hb)およびcell-free Hbによる血管内皮由来弛緩因子(EDRF)不活化作用をウサギ大動脈標本を用いて比較した. 細胞性Hbとしてliposome Hbおよびヒト新鮮赤血球を, cell-free HbとしてDPG除去Hbおよびpyridoxal 5'-phosphate (PLP)修飾Hbを用いた. 全てのHb溶液がacetylcholineによる弛緩を抑制し, 赤血球およびliposome Hbによる血管収縮は1mg/mlで最大に達したが, 一方cell-free Hbは最大収縮量に差はないものの10μg/mlで最大値となった. 従って, cell-free Hbの有するEDRF不活化作用は細胞性Hbに比べ100倍程度高いと見積られた. DPG除去HbおよびPLP-Hbの間には血管収縮作用に差は認められず, 酸素親和性の違いによるEDRF不活化の差は認められなかった. 以上の結果から, Hb溶液によるEDRF不活化の最大の要因は細胞性であり, cell-free Hbは強力な血管収縮因子となりうることが示された.