人工臓器
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HEMA-St ABA型ブロック共重合体表面における粘着血小板形質膜グリコカリックスの微細構造の良好保存
阿部 一彦鈴木 憲岡野 光夫桜井 靖久堀江 俊伸
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1995 年 24 巻 1 号 p. 52-58

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抄録
HEMA-st ABA型ブロック共重合体(HSB)表面に室温にて5時間粘着した血小板形質膜グリコカリックス(GC)の微細構造の保存性にっいて透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて解析した。さらに、粘着血小板の超薄縦断面のTEM像を高解像度画像処理解析装置(IA)を用いて定量的に評価した。対照群として、PSt及びHEMA-Stランダム共重合体(HSR)表面を用いた。血小板GCはルテニウムレッドを用いて染色した。HSB表面に対する血小板はGCを足場にした狭小の空間を保持して粘着しており、その細胞全周のGCの微細構造は、intact血小板のそれと同様に良好に保持されていた。一方、PSt及びHSR表面に対する血小板は強固な粘着を示すように血小板GCの狭小の空間は観察されなかった。そして、その粘着血小板の外表面のGCはところどころ欠損して観察された。粘着血小板のTEM像のIAによる定量的評価においては、HSB表面はPSt及びHSR表面に比べて内部構造変化を著しく抑制していた。また、HSB表面での粘着血小板の貯蔵顆粒数はintact血小板のそれとの間に有意差はなかった。以上のことから、HSB表面はPSt及びHSR表面に比べて、GCの微細構造を良好に保持した血小板のsoft landingを5時間にわたり維持させ続けることより、粘着血小板の超微形態変化(内部構造変化及び放出反応)を著しく抑制することが示された。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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