抄録
長期血管内留置が可能な抗血栓性材料として臨床的に用いられている親水性ヘパリン化材料と細菌(E. coliおよびS. aureus)の相互作用を定量的、形態学的に評価した。対照試料であるPVC表面では菌の接着量は経時的に増大し、いずれの菌も粘着性多糖に覆われた細菌群(Biofilm)が形成された。一方、親水性ヘパリン化材料表面への菌の接着は著しく抑制され、Biofilmの形成も見られなかった。ヘパリン自体には抗菌活性が見られなかったことから、この材料はハイドロゲルであるため菌との疎水性相互作用が弱められることに加え、全体として陰性荷電を持つ細菌表層と材料表面に存在するヘパリンの陰性荷電間の静電反発力により細菌接着を強く抑制ものと考えられた。また、材料への血漿タンパク質吸着により菌の接着挙動は変化し、この場合には特異的相互作用が関与していることが示唆された。