高性能透析膜の多くは非対称膜であるが、膜の非対称構造とその溶質透過性の関連は明らかになっていない。膜に吸着する溶質では、膜の半径方向の位置によって膜内拡散係数および平衡吸着量が異なるため、非対称膜の膜内への移動速度が、溶質の移動方向(内側→外側, 外側→内側)により異なる。これを利用して、非対称構造の評価を試みた。中空糸透析膜に吸着するタンパク質あるいは染料を用い、膜内部への溶質の移動速度を測定し移動速度曲線の移動方向による差異を溶質により比較した。その結果、非対称構造に起因すると考えられる移動速度曲線の違いが現れた。移動速度曲線の形状は、緻密層の構造が非対称であることに起因して移動初期に差が大きく現れるもの、膜全体の非対称構造に起因して中心部で差が現れるものがあった。これより、吸着を利用して透析膜の溶質透過性に影響を与える非対称構造の評価が可能であると考えられる。